はじめに(重要)
本記事は法的助言ではありません。ライセンスの解釈は、利用形態・配布形態・準拠法・契約の有無によって結論が変わります。実際の判断は、必ず弁護士など有資格の専門家にご相談ください。
調査時点は2026年7月20日です。ライセンス条項は改訂されます。各記述には出典URLを添えていますので、最新の状況はご自身で一次情報をご確認ください。
確認が取れなかった事項は、推測で埋めずに「確認できなかったこと」として明示しています。
RAW(生データ)を扱うソフトウェアを作ろうとすると、通常の画像形式では出てこない論点が一気に増えます。形式そのものがメーカー独自で公開仕様ではないこと、デコーダのライブラリにコピーレフト系のライセンスが多いこと、メーカー公式SDKが申込みと契約を前提としていること。本記事では、これらを一次情報にあたって整理します。
1. RAW形式そのものの位置づけ
RAWはひとつの形式ではありません。キヤノンのCR2/CR3、ニコンのNEF、ソニーのARW、パナソニックのRW2、富士フイルムのRAF、シグマのX3Fなど、メーカーごと、しばしば機種ごとに異なる独自形式の総称です。
多くはTIFFの構造(IFD)を土台にしていますが、センサーデータの圧縮方式やカラーマトリクスといった中核部分はメーカー独自の領域に置かれており、一般に公開仕様が存在しません。この点は、今回調べた各社SDKの説明からも裏付けられます。富士フイルムはCamera Control SDKのページで、次のように明記しています。
出典: FUJIFILM Camera Control SDK(2026-07-20確認)
つまり、オープンソースのRAWデコーダが各社の形式を読めているのは、メーカーが仕様を公開したからではなく、開発者が解析して実装したからです。この事実が、後述するリバースエンジニアリングの論点につながります。
2. オープンソースのRAWデコーダ
まず全体像です。いずれもライセンス文書そのもの、またはリポジトリのライセンスファイルを直接確認しています。
| ライブラリ | ライセンス | 要点 |
|---|---|---|
| LibRaw | LGPL 2.1 または CDDL 1.0(利用者が選択) | 現在は商用ライセンスの提供なし。デモザイクパックは別ライセンス |
| dcraw | 正式なライセンスなし(作者独自の許諾文) | 利用は自由。再配布はFoveon関連のRESTRICTED関数のため条件付き |
| rawspeed | LGPL 2.1 | darktableプロジェクトのRAWデコードライブラリ |
| libopenraw | LGPL 3以降 | 一部ファイルはMPL-2.0など個別ライセンス |
| Adobe DNG SDK | Adobe独自(実質的に寛容) | OSI承認ライセンスではない。商用配布時は補償条項あり |
| exiv2 | ソースの表記は GPL-2.0-or-later(v2以降) | メタデータ用。商用ライセンスの提供は終了。WikiのGPLv2 only表記と食い違う(後述) |
| ExifTool | プロジェクト内で表記が矛盾(LICENSEはGPL v3全文/READMEはPerlと同条件) | メタデータ用(後述) |
| Little-CMS | MIT | カラーマネジメント用 |
2-1. LibRaw:デュアルライセンスの選択制
LibRawはRAWデコードの事実上の標準的な選択肢です。リポジトリの COPYRIGHT は、2つのライセンスのうち一方を利用者が選ぶ形だと述べています(原文は「under the terms of the one of two licenses as you choose」)。実際のライセンスファイルの冒頭を確認すると、バージョンは次のとおりです。
LICENSE.LGPLは「GNU LESSER GENERAL PUBLIC LICENSE, Version 2.1, February 1999」で始まる。LGPL 3ではなく2.1。LICENSE.CDDLは「COMMON DEVELOPMENT AND DISTRIBUTION LICENSE (CDDL) Version 1.0」で始まる。
出典: LibRaw COPYRIGHT / LICENSE.LGPL / LICENSE.CDDL(いずれも2026-07-20確認)
それぞれを選んだ場合に何が求められるかについて、LibRaw側の説明は次のような趣旨です。LGPL 2.1を選ぶ場合は、ライブラリを共有ライブラリとして利用し、ライブラリ自体に加えた変更をLGPL 2.1で公開すること。CDDL 1.0はより緩やかで、ライブラリへの変更の公開を強制されないとされています。いずれの場合も帰属表示(attribution)は必要で、署名した書面は不要とされています。
出典: libraw.org/node/2228(2026-07-20確認)
2-2. LibRawで見落とされやすい2点
(1) デモザイクパックはライセンスが違います。LibRawには LibRaw-demosaic-pack-GPL2 と LibRaw-demosaic-pack-GPL3 という別リポジトリのアドオンがあり、それぞれGPL v2以降・GPL v3以降です。ビルド時にこれらを組み込むと、成果物はGPLの条件に従うことになり、LGPL/CDDLを選んだ意味が失われます。ビルドオプションの確認が必要です。
出典: demosaic-pack-GPL2 / demosaic-pack-GPL3(2026-07-20確認)
(2) 独自の商用ライセンスは、現在は存在しません。かつてLibRawは「LGPL2 / CDDL / LibRaw独自ライセンス」の3択でしたが、独自ライセンスは0.18リリースで廃止され、締結済みの契約も失効したとアナウンスされています。「商用ライセンスを買えばコピーレフトを回避できる」という前提は、現在は成り立ちません。
出典: libraw.org/node/2228(2026-07-20確認)
2-3. dcraw:ライセンスではなく「作者の許諾文」
dcrawはDave Coffin氏による単一ファイルのRAWデコーダで、後続のほぼすべての実装の出発点になったものです。正式なオープンソースライセンスは付いていません。dcraw.c の冒頭コメントが、そのまま条件になっています。
(a) RESTRICTED関数を含む実行ファイルについて、追加費用なしで完全なソースコードを提供する(未改変なら作者のホームページへのリンクでよい、と注記あり)/ (b) GPL Version 2以降で配布する/ (c) RESTRICTED関数を除去・再実装するか、制限前のリビジョンからコピーする/ (d) 作者からライセンスを購入する
RESTRICTEDの対象は限定的で、Foveon画像を処理する関数のみです(Revision 1.237以降)。それ以外のコードは「remains free for all uses」とされています。
出典: dcraw.c($Revision: 1.478 $ / $Date: 2018/06/01$、2026-07-20確認)/ dcraw ホームページ
なお、公開されている dcraw.c の最終リビジョンは2018年6月です。作者による終了宣言は見つかりませんでしたが、実質的に更新は止まっていると考えるのが妥当です。新規開発でdcrawを直接採用する理由は、現在ではあまりありません。
LibRawはdcrawから派生したライブラリですが、COPYRIGHT で「LibRaw do not use RESTRICTED code from dcraw.c」と明言しています。RESTRICTED部分を含まないからこそ、LibRawはdcrawの再配布条件を引き継がずにLGPL/CDDLで配布できています。
2-4. WebAssembly移植の落とし穴
ブラウザでRAWを扱いたい場合、LibRawをWebAssemblyに移植したパッケージが候補に挙がります。ここには注意が必要です。
npmの libraw-wasm パッケージはマニフェストで "license": "ISC" を宣言していますが、対応するGitHubリポジトリにはライセンスファイルが見当たりませんでした。LibRawのWASMビルドは派生物であり、下流のラッパーがLibRawのコードをISCに再ライセンスすることはできません。実際の条件はLGPL 2.1またはCDDL 1.0のいずれかになるはずです。加えて、Emscriptenの出力は静的リンクであるため、LGPL 2.1が求める再リンク可能性の要件を満たすかどうかは自明ではありません(この点でCDDL 1.0のほうが素直な選択に見えますが、当該パッケージはどちらも明示していません)。
2-5. メタデータ系ライブラリ:プロジェクト内でライセンス表記が食い違う
ExifTool と exiv2 は、RAWのデコードではなくメタデータの読み書きに使われます。この2つは「調べても分からない」のではなく、調べると表記の不一致が見つかるという性質の問題を抱えています。
ExifTool。リポジトリの LICENSE ファイルはGPL v3の全文(「GNU GENERAL PUBLIC LICENSE Version 3, 29 June 2007」で始まる)です。一方 README は「This is free software; you can redistribute it and/or modify it under the same terms as Perl itself (either the Perl Artistic License or GPL).」と述べています。Perlと同条件であれば Artistic License またはGPL v1以降の選択制であり、GPL v3全文を置くこととは意味が異なります。これは確認できなかったのではなく、配布物の中で表記が矛盾しているという事実です。厳密な条件が問題になる場面では、作者に確認するのが確実です。
出典: ExifTool LICENSE / ExifTool README(2026-07-20確認)
exiv2。プロジェクトWikiには「GPLv2.0 only」との記載がありますが、実際に出荷されるソースコードのSPDXヘッダは SPDX-License-Identifier: GPL-2.0-or-later(v2以降)です(例: src/image.cpp)。両者は「v3を選べるか」という点で実質的に異なります。実務上は、実際に受け取ったソースコードのSPDXヘッダが効力を持つと考えるのが妥当です。したがって本記事の表では「GPL v2」と断定せず、ソースの表記に合わせて GPL-2.0-or-later としています。
出典: exiv2 src/image.cpp(SPDXヘッダ) / Exiv2/exiv2 リポジトリ(2026-07-20確認)
3. Adobe DNG
DNG(Digital Negative)は、Adobeが策定した汎用RAW形式です。「公開仕様だから自由」と単純化されがちですが、実際には特許ライセンス・SDKのライセンス・商標の3つを分けて考える必要があります。
3-1. 特許ライセンス
AdobeはDNG Specification Patent Licenseにより、次の権利を付与しています。原文の趣旨は「Adobeは、すべての個人および組織に対し、全世界・ロイヤリティフリー・譲渡不可・非独占の権利を、すべてのEssential Claimsのもとで付与する」というもので、その範囲はDNG仕様に準拠した画像ファイルの読み書きを可能にすることに限定されています。
実務上の注意点は3つです。
- 出典表示が必要:「This product includes DNG technology under license by Adobe」の旨を、ソースおよびドキュメントに目立つ形で記載することが求められます。
- 防御的終了条項:DNG準拠ファイルの読み書きに関してAdobeに特許訴訟を提起した場合、権利が失われ得ます。
- 特許番号の明示がない:このライセンスは具体的な特許を特定していません。
出典: Adobe: Digital Negative (DNG) / DNG Specification 1.6.0.0 PDF(冒頭に DNG Specification Patent License を収録)(2026-07-20確認。より新しい版はDNG配布ページから辿れます)
3-2. DNG SDK
DNG SDKはソースコードつきで配布され、その許諾は「使用・複製・派生物の作成・公開展示・公開実演・頒布・サブライセンスを、あらゆる目的で行える、非独占・全世界・ロイヤリティフリーのライセンス」という広範なものです。ただしOSI承認ライセンスではありません。著作権表示の保持が必要で、ドキュメントは複製できても改変はできず、商用配布者にはAdobeを免責・補償する義務が課されます。
出典: Adobe: Digital Negative (DNG)(SDK配布ページ)(2026-07-20確認。SDK同梱のライセンス本文および公開ミラーで条項を照合)
3-3. 商標は別問題
「Adobe」およびDNGロゴはAdobeの商標または登録商標であり、製品の推奨・宣伝に用いるにはAdobeとの別途の書面合意が必要です。特許ライセンスが無償であることと、ロゴを使えることは別の話です。
出典: Adobe: Digital Negative (DNG)(2026-07-20確認)
3-4. ISO標準になりました(2026年3月)
長らくDNGはISO標準ではありませんでした。関連するTIFF/EPが ISO 12234-2 であり、DNGはそれと「compatible」とされてきましたが、互換であることと同一であることは異なります。
状況は最近変わりました。DNGはISO 12234-4:2026「Digital imaging — Image storage — Part 4: Digital negative format」として発行されています。iso.org の掲載は「Edition 1」「2026-03」までで、日単位の発行日は示されていません。本記事では確認できる範囲にとどめ、2026年3月と記載します。
出典: ISO 12234-4:2026 / ISO 12234-2:2001(TIFF/EP)(2026-07-20確認)
4. カメラメーカーの公式SDK
「メーカー公式SDKを使えば安全」と考えたくなりますが、まずSDKの目的がRAW現像とは限りません。今回確認できた範囲では次のとおりです。
| メーカー | SDKの位置づけ | RAWデコード |
|---|---|---|
| ニコン | Camera Remote SDK と Image SDK の2系統。申込みと契約同意が必要 | あり(NEF/NRWを開くImage SDK) |
| キヤノン | EDSDK。申込みフォームと契約が前提 | 「with RAW Library」と表記された版が別項目で存在(無印版との差は推論。後述) |
| ソニー | Camera Remote SDK。リモート制御と画像取得 | 記載なし |
| 富士フイルム | Camera Control SDK。EULA同意が前提 | 明示的に対象外 |
| パナソニック | LUMIX Remote Control Library(ベータ)。カメラの11桁コード入力が必要 | 記載なし |
| OM SYSTEM | 現行のカメラ向け公式SDKを確認できませんでした | |
4-1. ニコン
ニコンは自社のSDKサイトで、「A Camera Remote SDK to integrate remote control features」と「An Image SDK to open RAW images (NEF and NRW files)」の2系統があると説明しています。RAWを開くための公式SDKを提供しているのは、今回調べた中ではニコンが目立つ例です。費用については「the use of SDK is free within the limit of license agreements」とされ、条件については「All limitations you need to follow (if any) are written in the license agreements presented when you download the SDKs」と、ダウンロード時に提示される契約書に従う形になっています。申込みフローでも、契約書に同意した場合のみ次へ進める旨が示されます。
出典: 引用箇所はいずれも Nikon SDK FAQ(/information/en/) より。申込みフローの記述は 申込みガイド による(いずれも2026-07-20確認)
4-2. キヤノン
キヤノンのEDSDKは、申込みフォームを経て提供されます。キヤノン(アジア)のSDK一覧には、「ED-SDK V13.20.10 with RAW Library」と「ED-SDK V13.20.11」が別項目として並んでいます。また、リリースノートにはバージョン13.9.10(2018年12月13日)で「Deleted RAW development functionality」(RAW現像機能を削除)と記載されています。
出典: Canon Developer Resources / EDSDK リリースノート(2026-07-20確認)
4-3. ソニー
ソニーのCamera Remote SDKは、リモート制御と撮影画像の取得が目的で、RAWデコード機能の記載はページ上に見当たりません。ライセンス条項は公開されており、要点は次のとおりです。
- 許諾は「限定的・非独占・譲渡不可」で、SDKを自分のPCにインストールして使う権利。
- 再配布は組み込みの形に限って許容:ライブラリのバイナリを分離不可能な形でアプリケーションに組み込んで配布する、という条件。
- ソースコードの導出、改変、リバースエンジニアリング、逆コンパイル、逆アセンブルは禁止。
- 軍事・武器用途を禁じる「Prohibited Use」の条項がある。
出典: Sony Camera Remote SDK / ライセンス条項(2026-07-20確認)
sony_camera_api 系リポジトリは、旧Camera Remote APIに対する第三者製ラッパーであり、ソニー公式のSDKそのものではありません。ライセンスの根拠として扱わないでください。
4-4. 富士フイルム・パナソニック
富士フイルムのCamera Control SDKは、画像転送の自動化と基本操作のリモート制御が目的で、前述のとおりRAF変換の情報は提供対象外と明記されています。また同ページには「USING THIS SDK TO CONNECT TO, OR CONTROL, ANY COMPATIBLE FUJIFILM CAMERA, WILL VOID THE CAMERA'S LIMITED PRODUCT WARRANTY.」(このSDKで対応カメラに接続・制御すると、カメラの製品保証が無効になる)という強い条項があります。導入検討時に見落とすと影響が大きい記述です。
パナソニックのLUMIX Remote Control Libraryは、設定・撮影操作・ライブビューや静止画/動画のコピー取得を対象としています。利用にはソフトウェア使用許諾契約への同意に加えて、カメラのバッテリーホルダー内に記載された11桁のコードの入力が求められます。ベータ版であるため動作とサポートは保証されない旨も記載されています。
出典: FUJIFILM Camera Control SDK / LUMIX SDK(2026-07-20確認)
5. リバースエンジニアリングの位置づけ
公開仕様がない以上、オープンソースのRAWデコーダは解析によって成立しています。ここには相互運用性のための例外規定という論点があります。
5-1. 2005年のNEF暗号化問題
この論点が現実の争いになった例として、2005年のニコンNEF暗号化の件があります。D2XとD2Hsでホワイトバランスのデータが暗号化され、サードパーティの現像ソフトが正しく扱えなくなりました。ニコンは「Nikon's preservation of its unique technology in the NEF file is employed as an action that protects the uniqueness of the file.」と説明し、公式SDKの利用を推奨する立場を取りました。
当時、AdobeのThomas Knoll氏は、リバースエンジニアリングがニコンとのライセンス契約または1998年のデジタルミレニアム著作権法(DMCA)に関わる法的問題になり得ると警告しています。
出典: Nikon Defends Encrypted NEF Format(2026-07-20確認)
5-2. 相互運用性のための例外
EU:ソフトウェア指令 2009/24/EC 第6条(逆コンパイル)。独立に作成されたプログラムの相互運用性を実現するために必要な情報を得るうえで不可欠である場合、権利者の許諾なくコードの複製・翻訳を行えるとされています。ただし条件があり、(1) ライセンシーまたは権限のある者が行うこと、(2) その情報が事前に容易に入手できなかったこと、(3) 必要な部分に限ること、が求められます。さらに第6条(2)により、得た情報を相互運用性以外の目的に使うこと、実質的に類似したプログラムの開発に使うことは認められません。
出典: Directive 2009/24/EC Article 6(2026-07-20確認)
米国:DMCA 17 U.S.C. §1201(f)。プログラムの複製物を適法に利用する権利を得た者が、独立に作成されたプログラムとの相互運用性の実現に必要な要素を特定・分析する目的に限って、アクセス制御の回避を行うことを認めています((f)(1))。(f)(2)はそのための技術的手段の開発・利用を、(f)(3)は相互運用性を可能にする目的に限って、得られた情報や手段を他者と共有することを認めています。オープンソースのRAWデコーダを配布するうえで意味を持つのは、この(f)(3)です。
出典: 17 U.S. Code §1201(2026-07-20確認)
6. 実務のチェックリスト
RAWを扱う製品・サービスを設計するとき、最低限ここを確認してください。
- そもそもRAWのデコードが必要かを問い直す。表示・選別が目的なら、埋め込みJPEGの取り出しで足りることがあります(後述)。
- LibRawを使うなら、LGPL 2.1とCDDL 1.0のどちらを選ぶかを文書化し、選んだ側の義務(帰属表示・変更の公開・リンク形態)を設計に落とす。
- デモザイクパックを組み込んでいないかビルド構成を確認する。GPLの条件が乗ります。
- WASMパッケージは宣言されたライセンスを鵜呑みにせず、何をバンドルしているか監査する。
- DNGを扱うなら、出典表示を製品のソースとドキュメントに入れる。ロゴ利用は別途Adobeとの合意が必要。
- メーカーSDKはダウンロード時に提示される契約書が本体。申込み前に、再配布可否・商用可否・秘密保持の条項を法務で確認する。
- 富士フイルムのように製品保証に影響する条項が含まれることがある。SDKページの注意書きを読み飛ばさない。
7. 確認できなかったこと
本記事の作成にあたり、次の事項は一次情報を確認できませんでした。これらについて断定的な記述はしていません。
- キヤノンEDSDKの契約書・NDAの条文:配布ページが動的で、契約PDFのホストにも到達できませんでした。ファイル名からNDAを伴う配布契約の存在は推測されますが、条項は読めていません。再配布・商用利用の可否について本記事は判断していません。
- ニコンの現行SDK契約書の条文:ダウンロード時にのみ提示されるため未確認です。第三者サイトにミラーされたニコンのライセンス契約書は見つかりましたが、現行のSDK契約と同一である保証がないため、本記事では条項を引用していません。
- OM SYSTEM/オリンパスのカメラ向け公式SDK:現行のものを確認できませんでした。存在しないと断定するものでもありません。
- Adobeの一部ページ:
helpx.adobe.comのDNG配布ページ自体には到達できましたが、調査環境から一部のページ・PDFに繰り返しタイムアウトしたため、該当箇所は公開ミラーで条項を照合しています。DNGに関する記述は、特許ライセンス本文とSDKのEULA本文(およびそのミラー)に基づいています。 - 2005年のNEF暗号化解析における個人の関与:具体的に誰が解析したかについて、一次情報を確認できなかったため個人名を挙げていません。
- キヤノンEDSDK V13.20.11 にRAWライブラリが含まれるか:4-2 のとおり、ページ上には「with RAW Library」の表記しかなく、含まれない版であるとの明示はありません。推論にとどめています。
- ISO 12234-4 の日単位の発行日:iso.org は「Edition 1」「2026-03」までしか示していないため、本記事では「2026年3月」としています。
なお、ExifTool と exiv2 のライセンス表記については、当初「確認できなかったこと」に分類していましたが、いずれも一次情報で確認可能でした。実態は「確認できない」ではなく「プロジェクト内で表記が矛盾している」であり、2-5 に移して記述しています。
8. 本サイトでの選択
以上を踏まえ、当サイトではブラウザ上でRAWをデコードするのではなく、RAWファイルに埋め込まれたJPEGプレビューを取り出す方式のツールを公開しています。多くのカメラは撮影時に自らJPEGを生成してRAWファイル内に格納しており、その取り出しはJPEGのマーカー構造を読むだけで完結し、RAWデコーダを必要としません。
できることは限られます。これはRAW現像ではなく、露出やホワイトバランスを後から追い込むといったRAW本来の利点は得られません。一方で、本記事で扱ったライセンス上の関係を自サイトに持ち込まずに済みます。「必要な機能を見極めて、依存を持たない設計を選ぶ」という判断の一例として参照いただければ幸いです。
Free Tool RAWプレビュー抽出を試す CR2・CR3・NEF・ARW・DNG・RW2・ORF・RAF などのファイルから、埋め込まれたJPEGプレビューを取り出します。処理はすべてブラウザ内で完結し、ファイルはサーバーに送信されません。よくある質問(FAQ)
LibRawを商用アプリで使えますか?
LibRawはLGPL 2.1とCDDL 1.0のどちらかを利用者が選ぶ形で配布されており、商用アプリでの利用自体は禁じられていません。ただし選んだライセンスの義務は履行する必要があります。かつて存在した独自の商用ライセンスは0.18リリースで廃止されており、現在は選択肢がこの2つだけです。実際の判断は必ず弁護士にご相談ください。
dcrawのコードを自社製品に組み込めますか?
dcrawには正式なオープンソースライセンスがありません。作者は「dcraw.cをダウンロードして使うのにライセンスは不要」としていますが、再配布についてはFoveon処理に関するRESTRICTED関数のために4つの条件のいずれかを満たすよう求めています。ソースコードを提供する、GPL v2以降で配布する、RESTRICTED関数を除去または再実装する、作者からライセンスを購入する、のいずれかです。
DNGは自由に読み書きできますか?
Adobeは仕様に準拠した実装に対して、DNGファイルの読み書きに限定した無償・全世界の特許ライセンスを付与しています。ただし出典表示が求められ、Adobeに対する特許訴訟を提起した場合に権利が失われる防御的終了条項があります。DNGのロゴや名称を宣伝に使うことは別途Adobeとの書面合意が必要な商標の問題であり、特許ライセンスとは切り分けて考える必要があります。
カメラメーカーの公式SDKはRAW現像に使えますか?
メーカーによって大きく異なります。ニコンはNEF/NRWを開くImage SDKを提供していると自社サイトで説明しています。キヤノンのEDSDKには「with RAW Library」と表記された版が別項目として存在しますが、「without RAW Library」との表記はページ上になく、無印版との違いは推論にとどまります。一方でソニーのCamera Remote SDKはリモート制御と画像取得が目的でRAWデコード機能の記載はなく、富士フイルムは「RAFファイルのRAW画像データの変換に関する情報はこのSDKでは提供されない」と明記しています。いずれも申込みと契約の同意が前提です。