はじめに(重要)
本記事は法的助言ではありません。公開されている一次情報を調査してまとめた技術的な整理であり、個別の製品・事業について権利処理が必要かどうかを判断するものではありません。実際の判断は必ず弁護士・弁理士にご相談ください。
特許の状況は時期によって変わります。特許プールの構成企業・料率・対象範囲は年単位で変動しており、実際に過去数年で大きく変わっています。本記事の記述は下記の調査時点のものです。最新の状況は各自で一次情報を確認してください。
iPhoneで撮った写真の .heic をWebサービスで受け付けたい。サーバ側で変換したい。デスクトップアプリに組み込みたい。こうした場面で「HEICはライセンスが面倒」という話を聞きます。しかしその「面倒さ」の中身は、実は性質の異なる3つの問題が混ざっています。本記事はそれを分解して、それぞれ何が確認できて何が確認できないのかを、出典付きで整理します。
- 規格のレイヤー — HEIF(コンテナ)と HEVC(コーデック)は別の規格
- ソフトウェア著作権のレイヤー — libheif は LGPL v3、x265 は GPL v2 など、実装ごとに条件が違う
- 特許のレイヤー — 上のどちらとも独立した、まったく別の問題
HEIFとHEVCは別物 — コンテナとコーデックを分けて考える
まず用語を分けます。HEIF(High Efficiency Image File Format)は ISO/IEC 23008-12 で定義された入れ物(コンテナ)の規格です。画像やその集合、サムネイル、メタデータ、回転や切り抜きといった編集情報をどう格納するかを決めていますが、中身の画像をどう圧縮するかは規定していません。
一方 HEVC(High Efficiency Video Coding / H.265 / ISO/IEC 23008-2)は圧縮方式(コーデック)の規格です。もともと動画用ですが、そのイントラ符号化(1フレーム内で完結する圧縮)を静止画に使えます。
Appleが .heic という拡張子で出力しているのは、HEIFコンテナの中にHEVCで圧縮した画像を入れたものです。つまり「HEIC = HEIF + HEVC」であり、HEIFコンテナにAV1で圧縮した画像を入れれば、それはAVIFになります。
この分離が規格の設計思想として意識されている証拠が、Nokiaが公開しているHEIF参照実装のライセンス文書にあります。同文書は、コーデックの特許を許諾の対象から明示的に除外しています。
“Codec Patent means a patent on image or video compression or decompression. Including, for the avoidance of doubt, any standard essential patent on any coding standard, such as ITU-T Rec. H.264, ISO/IEC 14496-10, ITU-T Rec. H.265, ISO/IEC 23008-2, ITU-T Rec. H.266, and ISO/IEC 23090-3.”
“For the avoidance of doubt the Licensed Patents shall not include Codec Patents. Codec Patent licenses are neither granted, implied nor otherwise conveyed hereunder.”
つまりこの文書からは、コンテナの層とコーデックの層が権利処理の単位として明確に切り分けられていることが読み取れます。ただし、これを「コンテナなら商用でも無償で使える」と読むのは誤りです。同じ文書は、許諾の範囲そのものを次のように限定しています。
“Licensed Field means the non-commercial purposes of evaluation, testing and academic research…”
“…grants to you a non-exclusive, worldwide, non-sublicensable, no-charge, royalty-free … license, under its copyrights and Licensed Patents only to, use, run, modify …, and copy the Software within the Licensed Field.”
すなわちこの許諾は評価・テスト・学術研究という非商用の目的に限定されており、商用利用はまったくカバーされません。さらに “Licensed Patents are limited solely to patents implemented in the Software.” とあり、対象はこの実装に含まれる特許に限られます。したがって、この文書を根拠に「HEIFコンテナは障壁が低い」と結論することはできません。読み取れるのは「コンテナとコーデックは別々に権利処理を検討すべき2つの層である」ということまでです。
この文書は特定のソフトウェア実装に対する非商用の許諾であって、HEIF規格を実装する第三者一般に対する宣言ではありません。商用製品でHEIFコンテナを扱う場合、この文書は根拠になりません。コンテナ層について何らかの特許主張が存在するかどうかは、本記事の調査範囲では判断できませんでした(後述)。
出典: nokiatech/heif LICENSE.TXT
実装ごとのソフトウェアライセンス — libheif / libde265 / x265
次にソフトウェア(著作権)のレイヤーです。HEICを扱うOSSは1つの塊ではなく、コンテナを解釈する層とコーデックを実行する層に分かれており、それぞれライセンスが違います。ここを取り違えると、GPLのコードを意図せず製品に取り込むことになります。
| ソフトウェア | 役割 | ライセンス |
|---|---|---|
| libheif | HEIF/HEICコンテナの読み書き。コーデックはプラグインとして外部ライブラリに委譲する | LGPL v3(サンプルアプリとGo/C++ラッパーはMIT) |
| libde265 | HEVCのデコーダ(読み込み) | LGPL v3(サンプルアプリはMIT) |
| x265 | HEVCのエンコーダ(書き出し) | GPL v2。加えて商用プロプライエタリライセンスが別途提供されている |
ここで見落とされやすいのが x265 の GPL v2 です。libheif の README も、HEIFの書き出しを行いたい場合に x265 を入れるよう案内したうえで、「ただし x265 は GPL である」と注意を促しています。読み込みだけなら LGPL の libde265 で完結しますが、書き出しを足した瞬間にライセンスの性質が変わるということです。GPL v2 のコードを静的リンクした製品を配布すれば、その製品全体にGPLの条件が及びうるため、プロプライエタリ製品では通常この構成は取れません。
x265 のライセンス文書の末尾には、GPLとは別に商用ライセンスの窓口が示されています。プロプライエタリ製品でHEVCエンコードを行いたい場合の選択肢のひとつです(ただし後述のとおり、商用ライセンスの取得は特許の問題を自動的に解決するものではありません)。
LGPL v3 は、ライブラリを動的リンクで使い、利用者がライブラリを差し替えられる状態を保つなどの条件を満たすことを求めます。静的リンクや、差し替えを技術的に封じる構成(一部の組み込み機器やアプリストア配布形態)では条件の充足が難しくなる場合があります。「LGPLだから安全」と単純化せず、リンク方式と配布形態をセットで検討してください。
出典: strukturag/libheif(README・COPYING) / strukturag/libde265(COPYING) / videolan/x265(COPYING)
ソフトウェアライセンスと特許ライセンスは別問題
本記事でもっとも強調したい点です。OSSライセンスを守ることと、特許の実施権を得ることは、まったく別の手続きです。
LGPL や GPL は著作権に基づくライセンスです。「このソースコードを複製・改変・再配布してよい条件」を定めるものであって、そのコードが実装している技術に第三者が持つ特許について、権利者に代わって実施権を与えることはできません。libheif の開発者は HEVC の標準必須特許を持っていないので、そもそも与えようがありません。
この点は前掲の Nokia のライセンス文書が明確に示しています。ソフトウェアの利用許諾を(それも非商用の範囲に限って)与えつつ、コーデック特許については「許諾されず、黙示的にも与えられず、その他の方法でも移転されない」と三重に否定しています。OSSを入手した時点で特許の話は終わっていない、というのが業界の共通した前提です。
したがって実務上は、次の2つを別々に確認する必要があります。
- 著作権面 — 使うライブラリのライセンス条件(LGPL/GPL/MIT等)を、自社の配布形態で満たせるか
- 特許面 — 自社の製品・サービスがHEVCの標準必須特許の実施に該当するか、該当する場合にライセンスが必要か
HEVCの特許プールの現状(調査時点)
HEVCの特許ライセンスは、複数の特許権者の特許をまとめて許諾する特許プールを通じて提供されるのが一般的です。ただしすべての特許権者がプールに参加しているわけではなく、プールに入っていない権利者と個別に交渉が必要になる可能性は残ります。HEVCは歴史的にこの「プールが分裂した」状態が長く続き、それがHEVC普及の障害だと繰り返し指摘されてきました。
プールの再編は3段階で進んだ
この節はまさに「古い情報に注意」が必要な箇所です。HEVCのプールは過去数年で二度大きく動いており、時期によって正解が違います。
第1段階:Velos Media の撤退(〜2023年ごろ)。かつては第3のプールとして Velos Media が存在しましたが、BlackBerry・Ericsson・Panasonic・Sharp・Sony・Qualcomm といった主要な特許権者が離脱し、Velos Media は第三者特許を各権利者に返還してHEVCのプール運営を終えたと報じられています。
第2段階:MPEG LA と Via Licensing の統合(2023年5月2日)。Via Licensing Corporation と MPEG LA が統合して Via Licensing Alliance(Via LA) が発足しました。特許プール運営団体同士の統合は業界初とされます。かつて「MPEG LAのHEVCプール」と呼ばれていたものは Via LA が引き継ぎました。古い資料で「MPEG LA」と書かれていたら、まず Via LA に読み替える必要があります。この時点で、稼働中のプールは Via LA と Access Advance の2つになりました。
第3段階:Access Advance による取得(2025年12月15日)。2025年12月15日、Access Advance が Via LA の HEVC/VVC プログラムを取得しました。同プログラムは現在、Access Advance の子会社である Video Codec Licensing LLC が VCL Advance プログラムとして運営しています。via-la.com の HEVC/VVC ページにも「Please note that as of December 15, 2025, Access Advance has acquired this HEVC/VVC program.」「This webpage is now managed by Video Codec Licensing LLC, a subsidiary of Access Advance.」との告知が出ています。Access Advance は、これによりHEVCとVVCの「one-stop shop」を実現すると説明しており、プログラムの統合を進める意向を表明しています。
かつての2プール体制は、Access Advance の傘下に集約される過程にあります。すなわち、同社が運営する HEVC Advance プールと、取得した VCL Advance(旧 Via LA HEVC/VVC)プログラムが、現時点では別プログラムとして並存しています。統合の完了時期と統合後の料率体系は、本記事の調査時点では確定していません。「HEVCのプールは Via LA と Access Advance の2つ」という2025年半ばまでの説明は、すでに古い記述です。
公表されている料率
VCL Advance(旧 Via LA HEVC/VVC プログラム)。公表されている料率体系には、年間10万台までは1台あたり0ドルという無償枠が設けられており、10万1台目以降が地域区分に応じて1台あたり0.30ドル(Region 1)または0.20ドル(Region 2)とされています(この無償枠は関連会社グループ内で1法人のみが利用できるとされています)。企業あたりの年間上限は3,000万ドルです。同ページには、このライセンスは「技術を実装するデバイス」に及ぶと記載されています。この料率は Via LA 時代に公表されたものが、取得後も同じページで維持されているものです。
HEVC Advance(旧 HEVC Advance プール)。Access Advance が従来から運営しているプールです。公開ページによれば、対象は「モバイル機器」「コネクテッドホーム・家電機器およびHEVCソフトウェア」「4K UHD以上のテレビ・ディスプレイ」「物理メディア上のHEVCコンテンツ」の4カテゴリで、デバイス・ソフトウェア・クラウドベースのサービスにおけるHEVCデコーダ/エンコーダを許諾対象としています。具体的な料率は公開ページには掲載されておらず、契約書のサンプル請求や問い合わせに誘導されます。
出典: Access Advance: HEVC/VVC プログラム取得の告知(2025-12-15) / Access Advance: VCL Advance / HEVC/VVC プログラム(現 Video Codec Licensing LLC 管理・料率掲載) / Via Licensing Alliance 発足の告知(2023) / Access Advance HEVC Advance / Access Advance「What do we license」 / IAM: End of Velos joint licensing programme
商用利用・再配布で実務上なにが問題になりうるか
以上を踏まえ、よくある構成ごとに「どのレイヤーが問題になりうるか」を整理します。下表は論点の所在を示すものであり、ライセンスの要否を判定するものではありません。
| 構成 | 著作権面の主な論点 | 特許面の主な論点 |
|---|---|---|
| OSのHEIC対応に任せる(macOS/iOS/Windowsの標準機能、Safariでの表示など) | 自社でコーデック実装を配布しないため、OSSライセンスの問題は生じにくい | OS側で処理されるが、自社製品が別途ライセンス対象になるかは個別確認が必要 |
| libheif + libde265 を製品に組み込む(読み込みのみ) | LGPL v3 の条件(動的リンク・差し替え可能性・条項の告知など)を配布形態で満たせるか | HEVCデコーダを製品に含めることになる。プールの対象範囲の確認が必要 |
| libheif + x265 を製品に組み込む(書き出しあり) | GPL v2。プロプライエタリ製品では通常成立せず、商用ライセンスの取得等を検討 | HEVCエンコーダを含むことになる。デコーダのみの場合より対象になりやすい |
| サーバ側で変換する(SaaS・API) | GPLは「配布」を引き金とするため単純なSaaS提供では発動しにくいが、コンテナ配布やオンプレ提供では発動しうる | Access Advance はクラウドベースのサービスも許諾対象に挙げている |
| HEICを受け取らず、利用者側で変換してもらう | 自社でコーデックを配布・実行しないため、両レイヤーとも回避しやすい | 同左 |
最後の行が、実は多くのWebサービスが選んでいる現実的な落としどころです。HEICを扱わないという設計判断そのものが、リスク管理として機能します。
なぜブラウザはHEICを表示できないのか
この記事の内容は、ブラウザの対応状況にそのまま現れています。caniuse.com によれば、調査時点で HEIF/HEIC をネイティブに表示できるのは Safari 17以降のみで、Chrome・Firefox・Edge はいずれも非対応です。
caniuse はその理由として、HEICは複雑でライセンス費用が高くブラウザが対応しづらいこと、そして AVIF や JPEG XL が無償ライセンスで提供され HEIC を置き換えることを目指していることを挙げています。つまり「Chromeで .heic が開けない」のは実装の遅れではなく、本記事で見てきたライセンス構造の帰結です。
Safari で表示できるのは、AppleのプラットフォームがすでにシステムレベルでHEVCデコーダを持っているためです。ブラウザが自前でデコーダを配布しているわけではありません。
出典: caniuse.com: HEIF/HEIC image format
Tool HEIC/HEIF変換ツール(ブラウザ内蔵デコーダ方式) この記事の主張をそのまま実装したツールです。HEVCデコーダを配布せず、お使いのブラウザが持つデコーダだけを使うため、Safariでは動作し、Chrome・Firefoxでは動作しません。動かない環境ではその理由を表示します。代替としてのAVIF・JPEG XLの位置づけ
AVIFは、HEIFと同系統のコンテナ構造に AV1 で圧縮した画像を格納する形式です。AV1は Alliance for Open Media(AOMedia)がロイヤリティフリーを掲げて策定した規格であり、この点がHEVCとの最大の違いです。ブラウザ対応もHEICより広く進んでいます。
ただし「ロイヤリティフリー=特許リスクがゼロ」ではありません。Sisvel は 2020年から AV1 の特許プールのライセンス販売を開始しています。AOMedia はこのプール発足後も、AV1 は「高額な特許ロイヤリティとライセンスの不確実性」という環境を克服できるとの立場を維持しています。これは AV1 に対する自信の表明であって、Sisvel がその環境を作り出しているという評価ではない点に注意してください。いずれにせよ、ロイヤリティフリーというのは策定団体とその参加企業の方針であって、団体外の第三者が特許を主張しないことの保証ではありません。
とはいえ、相対的なリスクとしてはAVIFのほうが明確に低いと言えます。HEVCには稼働中の特許プールがあり有償の料率が公表されているのに対し、AV1では主要な実装者に対する広範な無償許諾が団体として宣言されています。新規に画像形式を選ぶのであれば、AVIFやWebPを第一候補にするのが素直な判断です。
出典: Sisvel: Video Coding Platform (AV1) / Wikipedia: AV1
この調査で確認できなかったこと
正確性のため、裏が取れなかった点を明記します。以下について断定的な記述は避けています。
- HEIFコンテナ層そのものに対する特許主張の有無。本文のとおり、Nokiaの参照実装ライセンスは非商用の許諾であり、商用でコンテナ層が無償で使えることの根拠にはなりません。コンテナ層について権利主張が存在するか否かは、公開情報からは確認できませんでした。「コンテナは無償」と断定できる材料はありません。
- 静止画のみ(HEIF)の実装が、HEVC特許プールのライセンス対象に明示的に含まれるか。VCL Advance・HEVC Advance いずれの公開ページでも、HEIFや静止画への言及は確認できませんでした。両者とも記述は動画コーデックとしてのHEVCを前提にしています。静止画のみのデコーダの扱いは、公開情報からは判断できません。
- ソフトウェア単体(デバイスを伴わない)実装の具体的な料率。VCL Advance の公開料率は「デバイス」単位です。HEVC Advance は対象に「ソフトウェア」を挙げていますが、具体的な料率は公開されていません。
- Access Advance によるプログラム統合の完了時期と、統合後の料率体系。取得は公表されていますが、統合後にどの料率体系へ収斂するかは調査時点で公開されていません。この点は今後変わる可能性が高い箇所です。
- OSの標準機能を利用する場合に、アプリ開発者が別途ライセンスを要するか。公開情報からは判断できませんでした。
- プールに参加していない特許権者の存在と、その主張の範囲。プールは網羅的ではなく、これは公開情報からは確認しようがありません。
- 各国・各法域での有効特許の残存状況。HEVCの初版は2013年であり、標準必須特許の一部は満了時期に近づいていますが、出願時期は個別に異なり、一律の判断はできません。
- VCL Advance(旧 Via LA HEVC/VVC プログラム): accessadvance.com / 料率掲載ページ
- Access Advance HEVC Advance: accessadvance.com
- libheif リポジトリ: github.com/strukturag/libheif
- Nokia HEIF 参照実装のライセンス: github.com/nokiatech/heif
まとめ — 判断のためのチェックリスト
- HEIF(コンテナ)とHEVC(コーデック)を分けて考える。権利処理の単位が別々である、というのが出発点。ただし「コンテナ側は無償」という前提は置かないこと。Nokiaの参照実装ライセンスは非商用限定であり、商用利用の根拠にはならない。有償の料率が公表されているのはコーデック側である。
- 使う実装のライセンスを個別に確認する。libheif は LGPL v3、libde265 は LGPL v3、x265 は GPL v2。読み込みだけか、書き出しもするかで性質が変わる。
- OSSライセンスの遵守と特許の実施権は別の手続き。片方を満たしても他方は解決しない。
- プールは Access Advance への集約が進行中。Velos Media は撤退済み、MPEG LA は2023年に Via LA へ統合、さらに2025年12月15日に Access Advance が Via LA の HEVC/VVC プログラムを取得し、現在は子会社 Video Codec Licensing LLC の VCL Advance プログラムとして運営されている。「プールは2つ」と書かれた資料は古い。
- 最も確実なリスク低減策は「自分でHEVCを実装・配布しない」こと。OSやブラウザの機能に委ねる、あるいはHEICを受け付けない設計にする。
- 新規採用ならAVIF・WebPを優先する。ただしロイヤリティフリーも絶対の保証ではない。
- 最終的な判断は弁護士・弁理士に相談する。本記事は判断材料であって判断ではない。
よくある質問(FAQ)
HEIFとHEVCは何が違うのですか?
HEIFはISO/IEC 23008-12で定義された「入れ物(コンテナ)」の規格で、中身の画像をどう圧縮するかは規定していません。HEVC(H.265 / ISO/IEC 23008-2)は「圧縮方式(コーデック)」の規格です。iPhoneが出力する.heicファイルは、HEIFコンテナの中にHEVCで圧縮した画像を入れたものです。この2つは別々の規格であり、権利関係も別々に考える必要があります。
libheifはLGPLなので自由に商用利用できますか?
ソフトウェアの著作権ライセンスと特許ライセンスは別問題です。libheifはLGPL v3で配布されており、LGPLの条件を満たせば著作権の観点では商用製品に組み込めます。しかしLGPLはHEVCの標準必須特許のライセンスを与えるものではありません。実際、Nokiaが公開しているHEIF参照実装のライセンスは「Licensed PatentsにCodec Patentsは含まれない」と明記しています。特許面の要否は別途検討が必要です。
なぜChromeやFirefoxではHEICが表示できないのですか?
caniuse.comによれば、2026年7月時点でHEIF/HEICをネイティブ表示できるブラウザはSafari 17以降のみで、Chrome・Firefox・Edgeは非対応です。caniuseは理由として、HEICは複雑でライセンス費用が高くブラウザが対応しづらいこと、AVIFやJPEG XLが無償ライセンスで提供され置き換えを狙っていることを挙げています。
AVIFに移行すれば特許の心配はなくなりますか?
「心配が減る」とは言えますが「無くなる」と断定はできません。AVIFが使うAV1はAlliance for Open Media(AOMedia)がロイヤリティフリーを掲げて策定した規格です。一方でSisvelは2020年からAV1の特許プールのライセンス販売を開始しています。AOMediaはこのプール発足後も、AV1は「高額な特許ロイヤリティとライセンスの不確実性」という環境を克服できるとの立場を維持しています。ロイヤリティフリーは主催団体の方針であって、第三者の特許主張が存在しないことの保証ではありません。
HEVCの特許プールは今いくつありますか?
「Via LAとAccess Advanceの2つ」という説明は2025年半ばまでのもので、現在は古くなっています。2025年12月15日にAccess AdvanceがVia LAのHEVC/VVCプログラムを取得し、同プログラムはAccess Advanceの子会社であるVideo Codec Licensing LLCがVCL Advanceプログラムとして運営しています。Access Advanceは統合を進める意向を表明しており、現在は同社が運営するHEVC AdvanceプールとVCL Advanceプログラムが並存する状態です。統合の完了時期と統合後の料率体系は調査時点では公開されていません。
HEIFコンテナだけなら特許は無償ですか?
そう断定できる根拠はありません。NokiaのHEIF参照実装のライセンスは、許諾範囲をLicensed Field、すなわち評価・テスト・学術研究という非商用の目的に限定しており、商用利用はカバーされません。またLicensed Patentsはその実装に含まれる特許に限られると明記されています。この文書から読み取れるのは、コンテナとコーデックが権利処理の単位として明確に切り分けられているということまでで、商用でコンテナ層が無償で使えることの根拠にはなりません。